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 祝日に関する議論が毎年2月11日になると巻き起こるのが我が国「戦後」の年中行事です。


 反軍国主義怒気調、戦前回帰恐怖調、愛国万歳絶叫調等のお囃子が方々から聞こえ、頼んでもいないのに街頭に大音量でBGMを流すもの、旗やノボリを掲げてマーチするもの、平和人権を拝み倒す集会を開くもの、透明な聴衆に向かって演説をぶつもの、ええじゃないかを踊るもの、と狂態人がアチコチに現れ「国民の祝日」を大いに盛り上げます。こういったお祭りを見るとどうにも祝日気分でぐうたら出来ない当方としては幾らか嫌な話です。


 この祝日のお祭りは狂態は狂態ですけれど、彼らがどうして絶叫するのかという理由も「祝日」の成立を知ればなんとなく分かるわけですし、これには意味もあります。ということで、「祝日」について書いてみます。


 さて、このブログで私は「保革論争の淵源はGHQ改革にあり」(+「戦後」を認めて修正していきましょう)、という主張を行っているのですけれど、実はこの祝日論議もこのGHQ戦後改革に元があります。そこをまず、ご理解のうえで以下ご覧下さい。







 現在の日本でも「祝祭日」という言葉が使われますが、これは正確な使用法ではありません。戦後日本で作られた「祝日法」には「国民の祝日」しかかいておらず、宗教儀式上の大切な日である「祭日」は設けられていません。戦前の日本には主に皇室儀式や神道に基づく「祭日」があったため、その名残で「祝祭日」という人が多いんだと思います。


 さて、戦前、「年中祭日・祝日等ノ休暇日」という太政官布告によって8つの祝祭日が規定されたのが明治6年の出来事でした。以来、祝祭日に2つの皇霊祭が追加される改正が明治11年(合計10)にあり、昭和のころには勅令(「休日ニ關スル件」)によって祝祭日はさらに変化し、孝明天皇節と明治天皇節が省かれ、その代わりに明治天皇祭と大正天皇節が追加。さらに明治天皇節は明治節となって復活し、祝祭日は11日になりました(元日の四方拝を含めれば12日)。


 もちろん天長節(天皇誕生日)は天皇の代が変われば、それによって日にちは変わりますし、大正天皇が崩御されれば大正天皇「節」でなく大正天皇「祭」へと祝祭日は代わります。その結果、元日である四方拝を含め、



四方拝:1月1日 四方拝。神道色あり

元始祭:1月3日 歴代皇霊や天神地祇の鎮祭を行う儀式。神道色あり

新年宴会:1月15日 宮中の新年祝賀会がもと

紀元節:2月11日 神武天皇即位の日を計算して出された日

春季皇霊祭:春分の日 仏教的なのか神道的なのか、皇祖を祭る日

神武天皇祭:4月3日 神武天皇崩御の日

天長節:4月29日 昭和天皇のお誕生日

秋季皇霊祭:秋分の日 春季皇霊祭に同じ

神嘗祭:10月17日 新米を伊勢神宮に奉納する日。神道色あり

明治節:11月3日 明治天皇誕生日

新嘗祭 :11月23日 新嘗祭。神道色あり

大正天皇祭:12月25日  大正天皇崩御の日



、という11(12)祝祭日になったわけです。


 ところが、日本が敗戦するとこの祝祭日がマズくなってきます。GHQの「神道指令」が発布され、神道色の強い祝祭日は如何なものか、となり、新憲法下の国民主権において天皇色も忌避されるようになります。


 GHQからも勧告を受け祝祭日を変更するよう片山内閣は動き出します。また、上記の理由のため宗教色の強い「祭日」という言葉は使われなくなり全て「祝日」のカテゴリーに含めるようになりました。こういった具合に暦の中の「祝祭日」は改革の暴風に巻き込まれていったのです。


 上記の表の通り、戦前の祝祭日は神道色と皇室色が色濃いものでした。それゆえ民主的に「改革」されなければならない、ということになります。しかしながら、急激で強圧的な改革には当然、違和感や異論も出てきます。「民主主義とかいっているが慣れ親しんだ慣行まで変えるのはちょっとやりすぎなんじゃないか」(時事新報要旨)、そんな意見も出てきます。


 世論の方だって急激な社会慣行の変更に戸惑う意見が出て当然でしょう。GHQ改革ってのは文字はかえるし、宗教は変えるし、教育も変えるし、言論は弾圧するし、全く強権的なんだからぁ、もぅ、なんて思うわけです。出来れば自分たちの意見も聞いてよって思ったりもします。


■参考
片山哲(社会党)
昭和22年11月22日
衆院文化委員会
 第二の國民的行事についての御意見、まことに御もつともでありまして、この問題についても、いろいろ考えておるのでありますが、やはり國民の中には、相当保守的な考えをもつておられる方もあつて、在来の國家的行事を全部消すということも、あまりさびしい、何らか残してもらいたいというような希望も、相当あるものでありますから、将来の平和國家發足のためと、また國民の感情等ををもいくらか入れまして、これもできるだけ速やかなる方法によりまして、對策を立てたいと存じております。



 さぁ、ここで以下に当時の世論調査を見せましょう。この世論調査は昭和23年、諸官庁、各議院において話題となっていた祝祭日問題をどのようにするか、祝祭日は国民生活に密接に関わるから世論の意見を聞いてみようじゃないか、と、こういった経緯で総理庁が行ったものです。


 GHQ指導の下での3回の予備調査の後、本格的にやってもよろしい、とGHQが許可を与え行われました。当り前ながら都市部、郡部など様々な地域を政党基盤の別なく調査をした、とのことです。



内閣府(世論調査時は総理庁)
祝祭日に関する世論調査
http://www8.cao.go.jp/survey/s22/S23-01-22-02.html
・調査目的

昨年十二月上旬閣議において祝祭日改正の問題が採り上げられて以来,両議院に於て種々検討したが,元来この問題は全国民の問題であるので,広く全国に亙る世論調査の必要が切望せられ,本調査を見るに至った


・調査対象
 
(1) 母集団 数え年18才以上の男女
(2) 標本数 6,145
(3) 抽出方法 層化任意見本法



・調査時期
 
昭和23年1月23日〜昭和23年2月15日



一,適当なものの番号に○印をつけて下さい。
二,その中で,ぜひほしいものは◎印にして下さい。


(1)○


(99.9) 新年
(86.7) 天皇陛下のお生れになった日

(80.1) お盆
(72.0) 平和を記念する日
(81.2) 建国の記念日

(66.5) 春分(彼岸の中日)
(66.3) 秋分(彼岸の中日)
(64.0) 新穀に感謝する日
(59.8) 国の為になくなった人々を追憶する日
(56.1) 国際親善の日(クリスマス)

(44.1) ひな祭
(43.7) 新憲法施行の日
(40.3) 新憲法公布の日
(40.2) 明治時代を記念する日


(2)◎


(60.4) 新年
(36.5) 天皇陛下のお生れになった日
(25.8) 建国の記念日

(23.2) お盆
(21.0) 平和を記念する日
(17.8) 国のためになくなった人々を追憶する日
(11.9) 新穀に感謝する日





Q2(5) (5)建国の記念日

(99.3) 二月十一日(現紀元節)
(0.7) 別の月日のよいもの





 このほかにも時事通信社の世論調査なんかがありますが上記の調査と似たようなものなので省略します(それと、世論なんてのは日々刻々と変わるもんです。この時点の意見だと割り切ってください)。


 こう見てみると祝祭日を変えることを前提とした調査だと分かるんですが、まぁ、それは置いといて、中でも新年やお盆といった年中行事的なものが支持上位につき、天皇誕生日や建国記念日、戦死者追悼の日なども強く支持されていることが分かります。新嘗祭なんかも支持されていますね。面白いのが平和記念日、これは将来の講和条約発効日を祝日にしよう、というわけなんですが今現在は講和条約発効日は祝日になっていないでしょう。私を含め一部からは祝日にしましょう、って意見も出ていますが。


 新憲法に関する祝日を作ろうっていうのも支持が出ています。これは現在、憲法記念日がありますよね。国の根幹となる憲法ですから祝日になっても当然という感じでしょうか。憲法自体が支持されなければこういう結果にはなりませんから、面白い結果ではありますね。


 あとはクリスマス。国際親善の日って(笑)。どうして日本人の大半はキリスト教徒でもないのにクリスマスがこう投票されるのかというと、クリスマスって日本で結構昔から根付いていたんですよ。戦前にはサンタクロースが出没していました。だから「パーティーの日」ってイメージもあったんだと思います。国会議事録を読んでもクリスマスを祝祭日にするなら、孔子節とブッタ節だ、いやいやそれならマホメットと天理教はどうするんだ、とか中々面白い意見も沢山あります。まぁ。政教分離上どうなんだろう、って気はしますが、23日天皇誕生日、24日クリスマス祝日、25日大正天皇祭で三連休とか現代でもどうでしょうか、・・・ムリか


 建国記念日を見てみると、「紀元節」名称で「2月11日」支持が圧倒的ですよね。戦後胚胎期の世論としては従来の祭日も生かそう、新しい祝日もOK、天皇誕生日も問題なし、紀元節も当然、こういうものだったんですね。






 こういう世論調査を踏まえて(?)政府・議会は1948年に祝日法を作りました。


 祝日法の第一条、目的規定は


祝日法 第一条
第1条  自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。



 と、いうように、現在ではこういう条文ですが、草案には「われら日本国民は、ただしい伝統を守りつつ」という文言も入っていたみたいなんです。これはGHQによってダメ出しされてしまいました。「われら」や「伝統」という文字はGHQ政策に反するので気に食わなかったようです。


 祝日の日程と中身はどう変化したのでしょう。




祝日法における祝日(現在のもの)
国民の祝日に関する法律 第2条
元日 :1月1日 年のはじめを祝う。

成人の日 :1月の第2月曜日 おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。

建国記念の日:政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。

春分の日:春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。

昭和の日 :4月29日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。

憲法記念日:5月3日 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。

みどりの日:5月4日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。

こどもの日:5月5日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。

海の日:7月の第3月曜日 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。

敬老の日:9月の第3月曜日 多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。

秋分の日:秋分日 祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。

体育の日:10月の第2月曜日 スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう。

文化の日:11月3日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。

勤労感謝の日:11月23日 勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。

天皇誕生日:12月23日 天皇の誕生日を祝う。






 祝日法は最初のものが改正されていって上記現在の表では祝日が増えているのですが、この祝日、結構引き継ぎがありますよね。「元日」は四方拝、天長節である「天皇誕生日」、新嘗祭である「勤労感謝の日」、「春分の日」・「秋分の日」は春季・秋季皇霊祭、改正されて付け加えられた「昭和の日」(日付は旧「みどりの日」)は昭和天皇の誕生日(旧天長節)、「建国記念日」は紀元節で、「文化の日」は明治節、といった具合です。このように日にちの引き継ぎが日本側、そして「戦後胚胎期」を抜けた「戦後」日本の改革でなされたわけです。祝祭日の日程が急に変更されても混乱を生みますし、現状のまま残していきたいという意向があったのでしょう。


 祝祭日の主旨もまぁまぁ引き継がれた感がありますが、やはり神道色や天皇色はかなり抑えられた形になっています。例えば新嘗祭を「勤労感謝の日」にしたのもそうですし、祝日法制定時には建国記念日の日にち(現在は旧紀元節と同じ)は決まっていませんでした。昭和の日も最近の改正ですよね(代わりに「みどりの日」がありましたが、これも天皇とは表面上関係なく自然を大切にする日でした)。明治節も「文化の日」としていますし、春分の日、秋分の日も相当神道色、皇室色が薄められています。






 このように旧祝祭日と祝日は引き継ぎつつも変化しているわけですが、「戦後胚胎期」(占領期)を抜け、自主政治が可能となった「戦後期」となり、段々とこの祝日法も改められるようになりました。そこでGHQ改革を保持、推進したいという考えを持つ勢力、戦前の文化を尊重したい、GHQ改革を修正したいという意見を持つ勢力とがぶつかることで、激しい論争を生みました。


 それが建国記念日を何時にしようか、2月11日は軍国主義的だ、という論争や昭和の日をつくろう、つくるな、という論争として持ち上がり、建国記念日が旧紀元節と同じ2月11日に決まったものですから、毎年毎年の2月11日のお祭り騒ぎとなっているわけです(批判する側は2月11日は神武天皇の即位日を計算して導き出したものなので科学的根拠が薄弱である、天皇制を中心においている、軍国主義的だ、戦前回帰である、等々というのを理由にしています)。


 当方としては、2月11日だっていいと思うんです。建国記念の日について神話・説話を土台にしたっていいじゃないですか、昭和の日は史上明治と並ぶ激動の時代でしたから、これを省みる日にしてもいいじゃないですか、と思うわけです。


 祝祭日の変化、祝日の制定・改正もこのように戦後胚胎期と左右両翼の戦いと無縁ではありません。今後も毎年、こういう論争は起きるでしょう。「戦後」が終わっていない証拠ですね




※私は祝日を増やす案に基本的に賛成する人です。「ぐうたら記念日」ぐらいあってもいいと思っています。早く作ってください。




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「国民の祝日」の由来がわかる小事典 (PHP新書)「国民の祝日」の由来がわかる小事典 (PHP新書)
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